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CDP、Salesforce Marketing Cloudについて書いてます。

「データは富を生むのか?」:データ✕マーケティングで価値を生むために必要な考え方とは

皆さんこんにちは。Legoliss加藤です。

このブログでは多くの企業のお手伝いをさせていただく中で、 データとマーケティングと技術という側面で皆様のヒントになるような テーマでお話ししております。

本日のテーマは「データは富を生むのか」についてお話しします。

このテーマは2019年に行われたアドテック東京でもセッションのテーマとなっており、データをマーケティングに活用していきたい、DXを推進したいという企業の皆様には非常に関心の高いテーマなのではないかと思います。 早速ですがこの記事での結論をお伝えします。

■結論:データは富を生まない(直接的には)

冒頭から結論ですが、あくまで「データそのものだけでは富を生まない」という意味です。

「データを活用してマーケティング価値を最大化したい」と考えている方はまずはその価値の定義と逆算を行ってみるとイメージが湧きやすいかもしれません。

しかしながら上記のような売上やユーザーとのつながりをデータそのものが直接実現するということは不可能です。そのデータを活用した先にはそのデータを使って施策を打ったり、企画を考えたり、商品を作ったりといった組織・メンバーとしての意思決定やアクションが必要不可欠になります。
結局のところデータは生き物ではありませんので自律的に動くことはできません。
そのデータを生み出したユーザーやそのデータを活用する組織に目を向けて、分析や可視化などを交えながらユーザーや組織の未来の行動を変えていくことで、価値を最大化するのがデータマネジメントの重要な役割となってきます。

■データではなく組織やメンバーが実行と検証を繰り返して価値を生み出す

もちろんデータがあることでその信憑性や分析を行うことで相関性が見えたり、新しい事実に結びついてきます。しかしながら、そこをゴールにしてしまうと情報が一時的に加工されただけで価値を生むことはありません。 データマーケティングのプロジェクトでしっかりと価値を生んでいくためには、それらを組織として継続的に実行と検証を繰り返し、常にそのタイミングの最適な選択肢を選んでいくプロセスが必要です。

例えば、これからプロジェクトを立ち上げる方でデータを活用して何かしらの成果を出していきたいと考えているのであれば、足下の基盤を整えたり、分析の手法を調べたりなど少しずつ前に進めると同時に

・組織やユーザーがこのデータを使うことによりどのように変化していくのか
・どのようなアクションを取っていくことができるのか
・そしてそのアクションからさらにどのようなデータが取得できるようになるのか

そのサイクルを意識して設計を行うことでより中長期で常に精度の高い意思決定とともに戦えるデータのプロジェクトを設計することができます。データのプロジェクトの初期はこのようなサイクルを作っていくことに意識を集中させることが重要です。

逆にこんなことがある場合は注意が必要です。

・データが何かしらの正解を出してくれるかのようなスタンスで分析を繰り返している
・データや分析の基盤への投資にばかり対応するデータプロジェクトの中心がデータではなくそれを扱う「組織であったりメンバーだったりユーザーである」ということを認識する必要があります。

■組織とデータを結びつけていくためのポイント3つ

では組織とデータを紐付けていくためにはどうしたらいいでしょうか?

1.「どのデータ」だけではなく「誰のためのデータ」を意識する

データというのは事実の集合体であり、それに対して誰のものという議論は通常行われないと思います。しかしながらそれをどの部署が活用していくのか、という部分は自ずと浮き彫りになってくるもの。

データを活用する側がそのデータに対しての責任を持って、どう活用されていけばいいか、どのような分析が行われていけばいいかを主体的に考えていくというのは必要不可欠です。
更にそれをどう設計するかはデータのプロジェクトのリーダーが考えるべき最重要事項の一つとなってきます。

2.データから直接結果を出そうとしない

データの価値というものは誰かがアクションをしてその仮説検証または試行錯誤の中から循環して生まれてくるものです。データを分析する際にもそこから「正解」というようなものがシンプルに出てくることはなく、意思決定が必要なポイントにおいてその信憑性や確からしさを確認するための手段としてデータを活用するというのが重要です。

例えばデータを扱った上で来月の売り上げの予測を立てたいと思うケースは多いと思います。
ただそこでもう一歩踏み込んで仮説を立て

・今現在どの要素がその売り上げの向上に寄与しているのか
・今現在見えている売上がどのくらい季節要因によるものなのか

など現在見えている事実に対して因数分解を行うために分析を活用することで、普段見ているデータがさらに解像度高くマーケティングの思考錯誤に影響を持たせることができます。
そしてより多くの組織のメンバーがデータを活用してマーケティングの最適化を図ることに繋がります。

3.スモールステップでの結果を出していく

データマーケティングの分野ではその結果が大きく出てくるまでに数年かかるようなことも多くあります。しかしながら一発ホームランのようなことで変化することはなく、大きな結果というのは普段のデータの整理と仮説検証の回数、さらにそこからどれだけのアクションを積み上げてきているかに比例します。スコープが抽象的であったり、大きかったりすると、その試行回数とアクションについても大きくなってしまい、途中変化や予期しないデータに対して対応できなくなってしまいます。

例えば店舗や商品の改善ということを軸にデータの分析を行ったりマーケティングに活用するということであれば、商品ラインナップの刷新のような大きなスコープを最初から掲げるのではなく、ユーザーの声や購入履歴などをベースにその商品の打ち出し方や各種SNSでのコミュニケーションの内容を見直す、現在利用いただいているユーザーへのメルマガやクーポンのアプローチなど、細かなマーケティング施策に対して試行錯誤を繰り返していくところからスタートすることで、常にその変化にフィットさせた対応をとっていくことが可能になります。

■まとめ

いかがだったでしょうか?
データというものはそのままでは価値を生まず、そのデータを使って何かしらアクションを起こしたり意識を変えることが価値を生んでくるという意識が中長期でデータのプロジェクトを進めていくためには重要になってきます。
中長期でデータを活用するサイクルを回すことで複利のようにデータが資産化され、組織での活用も広がってくると思います。

この変化の大きい時代の中でデータを活用していくということであれば、「データは現代の富である」というところから一歩進んで、そのエネルギーを組織やユーザーに向けていくための仕組みづくりをチームで検討してみてはいかがでしょうか。

<このブログの執筆者>
株式会社Legoliss
データアーキテクト 加藤英也